タグチメソッド

T法(計算の詳細)

このページはT法の続きです。
ここではT法の計算について比例項による変動とSN比の算出の仕方の説明します。
また、比例定数の二乗の推定値の求め方からもう一つのSN比が用いられることがあるのでその紹介をします。

まず、T法のモデル次は次のように式で表されます。
\begin{eqnarray*}
X_{ij}&=&\beta_jM_i+\epsilon_{ij},\epsilon_{ij} \sim N(0,\sigma_j^2)\\
\end{eqnarray*}

T法における比例項による変動\(S_{\beta_j}\)は次のように求めています。
\begin{eqnarray*}
S_{\beta_j}&=&{\sum_{i=1}^l\hat{X}_{ij}^2}\\
&=&{\sum_{i=1}^l{(\hat{\beta}_jM_i)}^2}\\
&=&{\sum_{i=1}^l{\left(\frac{\sum_{t=1}^lX_{tj}M_t}{r}M_i\right)}^2}\\
&=&{\sum_{i=1}^l{\frac{\left({\sum_{t=1}^lX_{tj}M_t}\right)^2}{r^2}{M_i}^2}}\\
&=&\frac{\left({\sum_{t=1}^lX_{tj}M_t}\right)^2}{r^2}{\sum_{i=1}^l{{M_i}^2}}\\
&=&\frac{\left({\sum_{i=1}^lX_{ij}M_i}\right)^2}{r}\\
\end{eqnarray*}
続いてSN比\(\eta_j\)の定義は
\begin{eqnarray*}
\eta_j&=&\frac{\beta_j^2}{\sigma_j^2}
\end{eqnarray*}
であるので、\(\hat{\eta}_j\)は
\begin{eqnarray*}
\hat{\eta}_j&=&\frac{\hat{\beta}_j^2}{\hat{\sigma}_j^2}
\end{eqnarray*}
となります。\(\hat{\sigma}_j^2\)は誤差分散の推定値を表すので\(V_{e_j}\)になります。
そして\(\hat{\beta}_j^2\)は二つの計算方法があります。
一つ目は、\(\hat{\beta}_j\)の二乗つまり\(\beta_j\)の推定値の二乗を用いる方法です。
この場合、\(\hat{\eta}_j\)は
\begin{eqnarray*}
\hat{\eta}_j&=&\frac{\hat{\beta}_j^2}{\hat{\sigma}_j^2}\\
&=&\frac{\left({\frac{\sum_{i=1}^lX_{ij}M_i}{r}}\right)^2}{V_{e_j}}\\
&=&\frac{{\frac{1}{r}}S_{\beta_j}}{V_{e_j}}\\
\end{eqnarray*}
となります。
二つ目は、\(\beta_j^2\)の推定値を用いる(推定値の二乗ではなく二乗の推定値を用いる)方法です。
\(\beta_j^2\)の推定値は\(\beta_j^2\)と\(S_{\beta_j}\)の関係から次のように求めます。
\begin{eqnarray*}
S_{\beta_j}&=&\frac{\left({\sum_{i=1}^lX_{ij}M_i}\right)^2}{r}\\
E[S_{\beta_j}]&=&E\left[\frac{\left({\sum_{i=1}^lX_{ij}M_i}\right)^2}{r}\right]\\
&=&\frac{1}{r}E\left[\left({\sum_{i=1}^lX_{ij}M_i}\right)^2\right]\\
&=&\frac{1}{r}\left(E\left[{\sum_{i=1}^lX_{ij}M_i}\right]^2+V\left[{\sum_{i=1}^lX_{ij}M_i}\right]\right)\\
\end{eqnarray*}
ここで、
\begin{eqnarray*}
E\left[{\sum_{i=1}^lX_{ij}M_i}\right]&=&{\sum_{i=1}^l{E[X_{ij}]}M_i}\\
&=&{\sum_{i=1}^l(\beta_jM_i)M_i}=\beta_j{\sum_{i=1}^lM_i^2}=\beta_jr\\
V\left[{\sum_{i=1}^lX_{ij}M_i}\right]&=&{\sum_{i=1}^l{V[X_{ij}]}M_i^2}\\
&=&{\sum_{i=1}^l{\sigma_j^2}M_i^2}=\sigma_j^2r\\
\end{eqnarray*}
であるので、
\begin{eqnarray*}
E[S_{\beta_j}]&=&\frac{1}{r}\left(E\left[{\sum_{i=1}^lX_{ij}M_i}\right]^2+V\left[{\sum_{i=1}^lX_{ij}M_i}\right]\right)\\
&=&\frac{1}{r}\left((\beta_jr)^2+(\sigma_j^2r)\right)\\
&=&\beta_j^2r+\sigma_j^2\\
\end{eqnarray*}
となります。したがって、
\begin{eqnarray*}
\beta_j^2&=&\frac{1}{r}\left(E[S_{\beta_j}]-\sigma_j^2\right)\\
\hat{\beta}_j^2&=&\frac{1}{r}\left(S_{\beta_j}-V_{e_j}\right)\\
\end{eqnarray*}

この場合、\(\hat{\eta}_j\)は
\begin{eqnarray*}
\hat{\eta}_j&=&\frac{\hat{\beta}_j^2}{\hat{\sigma}_j^2}\\
&=&\frac{\frac{1}{r}\left(S_{\beta_j}-V_{e_j}\right)}{V_{e_j}}\\
\end{eqnarray*}

この二つの違いは式を見れば\(V_{e_j}\)を引くかどうかになっています。
田口玄一氏がT法を考案されたときは二つ目の方法でSN比を算出しています。
一方で、近年の論文では一つ目の方法を用いているものも多いです。
一つ目の方法は場合分けの必要がなく簡便です。
二つ目の方法は\(V_{e_j}\)が\(S_{\beta_j}\)よりも大きい場合にはその項目のSN比は0と定義するので変数選択がされます。しかし、全てのSN比が0になる場合もありそのときには総合推定値が計算不可能になってしまいます。
結局どちらの方法も\(\eta_j\)の不偏推定量ではないのでどちらが良いかは分かりませんが、僕としては計算が簡便な一つ目の方法をおすすめします。