レッスン 1 / 7
AIコーディングとは?
学ぶコト
- 補完・チャット・エージェントの違い
- 主なAIコーディングツール(2026年10月時点)
- AIと組むときの自分の役割
- このコースで作るもの
このコースでは、AIのコーディングエージェントに指示を出して、小さなプログラムを作ったり直したりする方法を学びます。
最初のレッスンでは手を動かす前に、AIコーディングの道具がどう変わってきたのか、いまどんな道具があるのか、そしてAIと組むと自分の役割がどう変わるのかを確認しておきましょう。
AIコーディングの3つの段階
AIがコードを書く手伝いは、ここ数年で大きく3つの段階を経てきました。
1. 補完:書いている途中で続きを出す
エディタでコードを書いていると、続きの数行を薄い文字で出してくれる仕組みです。2021年に登場した GitHub Copilot で広まりました。気に入れば Tab キーで受け入れ、いらなければそのまま書き続けます。
書くのはあくまで自分で、AIは「先回りして提案する」役です。
2. チャット:会話でコードを書いてもらう
2022年末の ChatGPT から一気に広まったのがチャットです。「pandas で月ごとに集計するコードを書いて」と頼むと、まとまったコードが返ってきます。
ただ、チャットのAIはあなたのパソコンの中を見られません。データの列名や今のコードは、自分で貼り付けて説明する必要があります。返ってきたコードをコピーして動かし、エラーが出たらまた貼り付けて聞く。この往復は人の仕事でした。
3. エージェント:ファイルを読み、コマンドを動かし、自分で直す
いま主役になっているのが、コーディングエージェントです。作業するフォルダの中で動き、次のことを自分で進めます。
- フォルダのファイルを開いて読む
- コードを書き、ファイルを直接書き換える
- ターミナルのコマンドを動かす(スクリプトの実行、ライブラリのインストール、テストなど)
- 結果やエラーを読んで、また直す
チャットのときに人がやっていた「貼る・動かす・エラーを伝える」の往復を、エージェントが自分で回すわけです。
| 補完 | チャット | エージェント | |
|---|---|---|---|
| コードを書くのは | 人(AIが続きを提案) | AI(人が貼り付ける) | AI(ファイルを直接書き換える) |
| ファイルを読むのは | 開いているファイルのまわり | 人が貼ったものだけ | AIが必要なものを自分で開く |
| 動かすのは | 人 | 人 | AI(人が許可する) |
| 人のおもな仕事 | 書く | 説明して貼る | 頼む・確かめる・決める |
エージェントは何をしているのか
たとえば、売上のCSVがあるフォルダでエージェントに次のように頼んだとします。
data/sales.csv を店舗別・月別に集計して、結果を折れ線グラフにしてください
エージェントの画面では、おおよそ次のような流れが進みます(表示はツールや版によって違います)。
● data/sales.csv を読みます(36行。列は date, store, category, product, price, quantity)
● analysis.py を作ります
● python analysis.py を実行します ← 実行してよいか、あなたに確認が出る
● エラー:KeyError 'Date'。列名は小文字の date でした。直してもう一度実行します
● 集計できました。グラフを output/monthly_sales.png に保存しました
「読む → 書く → 動かす → 結果を見て直す」をくり返しているのが分かります。ファイルを書き換えたりコマンドを動かしたりする前には、設定に応じてあなたに確認を求めます。この確認の仕組みは、次のレッスンと最後のレッスンで詳しく扱います。
主なツール(2026年10月時点)
コーディングエージェントは、いくつもの会社が出しています。名前や料金、含まれる機能はよく変わるので、使う前に公式のページで確かめてください。
| ツール | 使う場所 | プロジェクトの指示ファイル |
|---|---|---|
| Claude Code(Anthropic) | ターミナル、VS Code などのエディタ、デスクトップアプリ、Web | CLAUDE.md(なければ AGENTS.md) |
| Codex(OpenAI) | ターミナル(Codex CLI)、エディタの拡張機能、クラウド(Codex Cloud)、ChatGPT のアプリ | AGENTS.md |
| Cursor | AIの機能を組み込んだコードエディタ、ターミナル(Cursor CLI)、クラウドのエージェント | .cursor/rules、AGENTS.md |
| GitHub Copilot | エディタの補完とエージェント、GitHub 上で作業を任せる Copilot cloud agent、ターミナル(Copilot CLI) | .github/copilot-instructions.md、AGENTS.md |
| Google Antigravity | エディタ、デスクトップアプリ、ターミナル(Antigravity CLI) | AGENTS.md、GEMINI.md |
「プロジェクトの指示ファイル」は、プロジェクトのルールをAIに伝えるためのファイルです。5つ目のレッスンで書き方を学びます。AGENTS.md は多くのツールが読める共通の形式になっています。
使えるプランもツールによって違います。2026年10月時点では、Claude Code は有料のプランが必要、Codex は ChatGPT のプランに含まれ(無料プランでは一部だけ)、GitHub Copilot と Cursor には無料のプランがあります。
どれを選んでも、「ファイルを読む・書く・コマンドを動かす・結果を見て直す」という基本の動きは同じです。人がやるべきこと(何を頼むか、どう確かめるか、どう安全に使うか)も変わりません。このコースでは Claude Code を使いますが、学ぶ考え方はほかのツールでもそのまま使えます。
自分の役割はどう変わるか
エージェントと組むと、あなたの仕事は「書く人」から、次の3つに変わっていきます。
- 決める人:何を作るか、入力と出力、完成の条件を決める
- 確かめる人:コードを読む、数字を検算する、テストで確かめる
- 判断する人:データの扱い方、ライブラリを入れるか、どこまでやるかを決める
「それならPythonはもう覚えなくていい?」と思うかもしれません。答えは逆です。読めないコードは確かめられません。自分で一から書く力より、読んで、おかしいところに気づく力の大事さが増しています。
特にデータの仕事では、エラーで止まる間違いより、エラーを出さずにそれらしい数字を返す間違いの方がずっと怖いです。たとえば次のようなものです。
- 数量が空の行を、何も言わずに0として合計していた
- 「1月の売上」に、去年の1月の分まで混ざっていた
- 表を結合したら行が増えて、売上が水増しされていた
どれもコードは最後まで動き、グラフもきれいに出ます。気づけるのは、データの中身と、正しい答えのおおよその見当を知っている人だけです。
ウマたんAIに任せる部分が増えるほど、「この数字は本当に合っている?」と立ち止まれる人の価値が上がります。書く速さではなく、確かめる力を身につけていきましょう。
このコースで作るもの
| レッスン | 作るもの・やること |
|---|---|
| 2. 準備 | Claude Code・Python・Git・VS Code を用意し、いつでも元に戻せる状態を作る |
| 3. 最初の1本 | 売上のCSVを集計してグラフにするスクリプトを書かせ、読んで、直させる |
| 4. 確かめる | AIが書いた関数のバグをテストで見つけて直す(ブラウザで動かせる演習) |
| 5. 頼み方のコツ | CLAUDE.md、計画を先に出させる、小さく進める、やり直しどき |
| 6. 実践 | 要件を書くところから、Streamlit の売上ダッシュボードを作る |
| 7. 安全に使う | APIキー・権限・ライブラリ・ライセンスのチェックリスト |
前提として、Python基礎の内容(変数・リスト・if・for・関数)が読めると安心です。pandas を少し使うので、データ加工集計可視化を見ておくとさらに読みやすくなります。
Claude Code の有料プランをまだ持っていない人も、このレッスンと4つ目のレッスン(ブラウザで動かせる演習)はそのまま進められます。ほかのツールを使う場合も、考え方は同じです。
演習
次の3つの場面は、「補完・チャット・エージェント」のどれに近いでしょうか。また、それぞれの場面で、あなたが確かめるべきことは何でしょうか。
- VS Code で関数の名前を打ったら、続きの3行が薄い文字で出てきた
- ブラウザの ChatGPT にエラーメッセージを貼って、直し方を聞いた
- ターミナルで「テストが通るように直して」と頼んだら、AIがファイルを2つ書き換え、テストを動かして「すべて通りました」と報告した
解答を見る
- 補完です。受け入れる前に、提案された3行が自分の意図と合っているかを読みます。Tab を押す前の一瞬がレビューです
- チャットです。AIはあなたのコードやデータを見ていないので、返ってきた直し方が自分の状況に合っているか(列名・ライブラリの版など)を確かめてから使います
- エージェントです。「すべて通りました」をうのみにせず、どのファイルのどこが変わったか(差分)と、実際に動かしたテストの結果を見ます。テストの方が書き換えられて通っていないかも確かめましょう(4つ目のレッスンで詳しく扱います)
どの段階でも、最後に「これでよい」と決めるのは人です。AIが自分で動ける範囲が広がるほど、確かめる範囲も広がります。
まとめ
- AIコーディングは「補完 → チャット → エージェント」と進み、いまはAIがファイルを読み、コマンドを動かし、自分で直すところまでできる
- Claude Code・Codex・Cursor・GitHub Copilot・Google Antigravity など、どのツールも基本の動きは同じ。名前や料金はよく変わるので公式のページで確かめる
- 人の役割は「書く」から「決める・確かめる・判断する」へ。データの仕事では、エラーを出さない間違いに気づく力が一番大事になる
次のレッスンでは、Claude Code を使えるようにして、いつでも元に戻せる作業場所を作ります。
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